「旧耐震」は売りにくい?[兵庫県伊丹市]
2024/08/06
こんにちは、アークエステートです!
本日のテーマは「旧耐震の中古物件」について。現行の耐震基準は「新耐震基準」、改正前の古い耐震基準は「旧耐震基準」と呼ばれています。旧耐震と新耐震では建物の耐震性に大きな違いがあり、物件選びの際に耐震基準を重視する方も少なくありません。
この記事では、旧耐震基準や新耐震基準の概要、見分け方のほか、旧耐震の物件を少しでも高く売るコツについて紹介します。
1:そもそも耐震とは?
建築物における耐震とは、地震の揺れに耐えるための構造のことです。
そして、地震の揺れに耐える構造の基準を「耐震基準」といい、地震の多い日本では、建築物の設計において建築基準法に基づいた耐震基準が特に重視されています。
そのため、新たに建物を建てる際には、耐震基準を満たさないものは建築確認の許可が下りず、建物そのものがつくれません。
本章では、耐震基準が作られた背景や、耐震基準と耐震等級の違いを見ていきましょう。
①耐震基準が作られた背景
日本では1919年(大正8年)に「市街地建築物法」が制定され、初めて建築物における建築基準が設けられました(対象は木造のみ)。
当初の基準は大きな地震を想定したものではなかったため、関東大震災の翌年である1924年(大正13年)に改正が行なわれ、耐震基準が設けられることになりました。
そして1950年(昭和25年)には「建築基準法」が制定され、その後、国内で大きな地震が発生するたびに耐震基準に関する改正が重ねられています。
特に、1978年(昭和53年)に発生した宮城県沖地震の被害は大きく、1981年(昭和56年)には、耐震基準に大幅な改正が加えられました。
②耐震基準と耐震等級の違い
建築物の耐震性を測る指標は、耐震基準だけではありません。「耐震等級」も、建物の安全性の確認に用いられています。
耐震等級とは、建築物の耐震性を1~3の等級で表した指標のことです。
耐震基準が「建築基準法」で定められているのに対し、耐震等級は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって定められています。
2:旧耐震基準で耐えられるのは「震度5強」まで
旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)5月31日までの建築確認で採用されていた古い耐震基準のことです。
旧耐震基準では「震度5強程度の地震では倒壊しない強度」での構造基準が設けられており、近年の大規模地震(震度6強~震度7)は想定されていません。
そのため、旧耐震基準で建てられた築古の建物は、大地震が発生した際に大きな損傷を受けるリスクが懸念されています。
ただし、耐震基準は建物を建築するうえで最低限守るべき基準であり、「旧耐震基準だから震度5強以上の地震で必ず倒壊する」といったことはありません。
旧耐震基準で建てられていても、建築物によっては高い強度を有していることもあります。
なお、国土交通省の2018年(平成30年)の調査によると、耐震性が不十分な住宅の数は一戸建てで約560万戸、共同住宅で約140万戸でした。
2030年(令和12年)には、ほぼすべての住宅の耐震化が目標に掲げられています。
3:新耐震基準で耐えられるのは「震度7」まで
新耐震基準とは、1981年(昭和56年)6月1日以降の建築確認で採用されている耐震基準のことです。
新耐震基準では、震度5強程度の地震はもちろん、震度6強~震度7の大規模地震でも倒壊しない強度の構造基準が設けられています。
新耐震基準に基づいて設計された建築物は、旧耐震基準の建築物に比べると大規模地震発生時も損傷を受けにくく、被害への不安が少ないといえるでしょう。
なお、現行の新耐震基準は、1995年(平成7年)に発生した阪神淡路大震災の被害を受けて改正が加えられ、さらに新しい基準となりました。
2000年(平成12年)に改正されたこの新しい耐震基準は、「2000年基準」とも呼ばれています。
耐震基準 | 適用期間 |
旧耐震基準 | ~1981年(昭和56年)5月31日 |
新耐震基準 | 1981年(昭和56年)6月1日~2000年(平成12年)5月31日 |
新耐震基準(2000年基準) | 2000年(平成12年)6月1日~現在に至る |
4:「旧耐震」と「新耐震」を見分ける方法
では、中古物件に適用されている耐震基準を知るにはどうしたらいいのでしょうか。そこで確認すべきは、建物の建築確認日です。
建築確認日とは、建物を建築する際に行政庁から許可を受けた年月日のことです。
建築確認日により、中古物件の耐震基準は以下のように判断できます。
建築確認日 | 採用されている耐震基準 |
1981年(昭和56年)5月31日まで | 旧耐震基準 |
1981年(昭和56年)6月1日以降 | 新耐震基準 |
2000年(平成12年)6月1日以降 | 新耐震基準(2000年基準) |
建物の建築確認日を知るには、以下いずれかの書類を確認しましょう。
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①確認通知書(副)
確認通知書(副)とは、建築物の建築申請が受理された際に自治体から返却される書類です。
基本的には建物の建築工事を請け負った建築会社やハウスメーカー、もしくは建物所有者が建物図面とともに所持しています。
記載されている確認年月日をもとに、適用されている耐震基準を判断しましょう。
②完了検査済証
完了検査済証とは、建築物の検査完了時に発行されるハガキサイズの書類です。
裏面に記載されている確認年月日から、適用された耐震基準がわかります。
ただし完了検査済証には、建築内容の確認が行なわれた「確認年月日」と、工事完了後に検査が実施された「検査年月日」の2つの日付が記載されていることがあります。
完了検査済証で耐震基準を見分ける際は、必ず「確認年月日」をもとに判断してください。
また、完了検査済証には建築物の情報が記載されていないため、建物の特定が必要な場合は、その他の書類も併せて確認しましょう。
③台帳記載事項証明書
台帳記載事項証明書とは、自治体の建築確認台帳に保存されている内容を証明する書類です。
完了検査が行われた建物の情報は自治体の建築確認台帳に保存されているため、前述の書類がない場合は、市区町村役場で台帳記載事項証明書を取得しましょう。
台帳記載事項証明書に記載された確認済証交付年月日から、適用されている耐震基準を見分けられます。
なお、台帳記載事項証明書を発行する際は、役場窓口で以下のような情報を伝え、該当する建物を特定してもらう必要があります。
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5:旧耐震の中古物件を売る方法
旧耐震の中古物件を売るには、不動産会社に仲介を依頼して売却する、もしくは不動産会社へ直接売却する方法があります。
①不動産会社に仲介を依頼して売却する
不動産会社に仲介を依頼する方法は、不動産売却において最も一般的だといえます。
不動産会社に売りたい物件の査定を依頼したあとは、査定結果と売主側の希望をすり合わせながら、希望の売却価格に近い値段で売りに出すことが可能です。
購入希望者が見つかり成約となれば不動産会社への仲介手数料が発生しますが、売却活動期間はプロの視点からさまざまなアドバイスやサポートを受けられます。したがって、不動産売却の知識がなくても、スムーズに売却を進めることができるでしょう。
ただし、旧耐震物件は築年数が古く、買い手が見つからない可能性もあります。
一定期間売りに出しても成約に至らない、物件の条件からそもそも売却が難しいと判断される場合は、不動産会社への直接売却を検討しましょう。
②不動産会社に直接売却する
不動産会社に物件を直接買い取ってもらう、買取という方法もあります。
不動産会社による仲介が発生しないため、仲介手数料がかからず、売却までの期間も仲介に比べると短くなります。
一度売りに出してみたものの、成約に至らなかった旧耐震の物件でも、不動産会社になら買い取ってもらえる可能性が高いでしょう。
ただし、不動産会社へ直接売却する場合、買取価格は市場での相場の7~8割ほどになるのが一般的です。
少しでも高い金額で買い取ってもらいたいなら、売りたい物件に強い複数の不動産会社を比較しましょう。不動産会社ごとに得意とする物件のタイプは異なるため、慎重に選定してください。
6:旧耐震の中古物件の価格が安くなりがちな理由
旧耐震基準の中古物件は、耐震性そのものが買主の不安要素になりやすく、新耐震基準の中古物件と比べると敬遠される傾向にあります。
また売却できたとしても、以下のような理由から値引き交渉を持ちかけられるケースが多く、価格はどうしても安くなってしまいがちです。
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①住むうえで不安を感じやすいから
全国で大規模地震が懸念される昨今において、「旧耐震基準の中古物件では耐震性に不安がある」という買主が多いのが実情です。
ただし、前述したように旧耐震基準でも一定の強度を持つ建物は多く存在します。身近な建築物では、築数十年を超えるような「団地」が挙げられます。
耐震基準は建物の安全性を考える際に重視されるポイントですが、実際には、「旧耐震だから危ない」「築年数が古いから地震が起きたら倒壊する」とは限りません。
したがって、建物自体がどのような構造で、どの程度の強度があるのかを買主に説明できれば、買主の不安を軽減できるでしょう。
②修繕積立金などの維持費が高くなりやすいから
マンションの場合、長期修繕計画に基づく修繕積立金がかかります。この金額は経年による修繕箇所の増加に伴い、値上げされるのが一般的です。
買主にとって、住宅の維持にかかる費用は購入意思に直結しやすく、以下のような中古物件は値下げ交渉されてしまう可能性があるでしょう。
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③住宅ローン利用時の制限が大きいから
住宅ローンの審査では、購入する住宅の性能も審査対象となる場合があります。
多くの金融機関では、新耐震基準以上の住宅性能が融資の条件に含まれており、旧耐震基準の中古物件では買主が住宅ローンを利用できないケースがあります。
また、住宅ローンを利用できたとしても「借入額が制限される」など、不利な条件での融資となってしまう可能性もあるでしょう。
とはいえ、旧耐震基準の中古物件でも住宅ローンを利用できる金融機関は存在します。不動産会社を通じて、買主へ複数の選択肢を提示してもらうとよいでしょう。
④税金の優遇措置を受けられないから
住宅購入の際には、各種優遇措置を利用した節税が可能です。しかし、旧耐震基準の物件購入には、お得な節税制度を適用できないケースも少なくありません。
したがって、購入にかかるトータルの費用を考慮した買主から、値下げ交渉をされる可能性もあります。
なお、旧耐震基準の中古物件で適用対象外となってしまう主な優遇措置は、以下のとおりです。
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⑤建て替えの可能性があるから
旧耐震基準のマンションの場合、新耐震基準に適合させるための建て替えが行なわれる可能性があります。そうなると、工事期間中は一時的に引越しをしなければなりません。
また、マンションや一戸建てに限らず、建物が寿命を迎えれば、取り壊しになる可能性もあります。こうした懸念点から、売却のために大幅な値下げを検討しなければならないケースもあるでしょう。
7:旧耐震の中古物件を少しでも高く売るには?
旧耐震の中古物件を少しでも高く売るためには、次のような工夫を取り入れましょう。
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①買い手の安心につながるアピールポイントをまとめておく
買主にとって「この先も安全に住めるかどうか」は検討の際に外せないポイントです。
そのため「地盤は丈夫か」「避難経路は確保されているか」など立地の安全性を確認し、買い手の購買意欲につながるアピールポイントをまとめておきましょう。
なお、災害に対する安全面については、以下のような信頼できる情報元(行政が運営するサイトなど)から確認することをおすすめします。
②耐震基準適合証明書を取得してから売却する
耐震基準適合証明書とは、現行の耐震基準を満たしているすことを証明する書類です。
旧耐震基準に基づいて建てられた物件でも、必要な耐震工事を行ない、申請をすることで「十分な耐震性能がある建物」と証明できるようになります。
耐震基準適合証明書があれば、旧耐震基準の物件でも税金の優遇措置を受けられるため、買主の購買意欲アップにつながるでしょう。
③あえてリフォームはせず、「お得感」をアピールする
売却前にリフォームを行なえば、内装や設備の古さは払拭できるでしょう。ただし、かかった費用を回収できるとは限りません。
買主により物件の好みは異なるため、事前のリフォームによって、かえって売りにくくなってしまう可能性もあります。
したがって、旧耐震基準の中古物件では、あえてリフォームをせず、価格の安さで勝負するのがおすすめです。また、リフォーム費用を売主負担にして売りに出す、といった選択肢もあります。物件そのものの安さやリフォーム費用が浮くお得感を、買主へ効果的にアピールできるでしょう。
④不動産会社をよく比較検討する
前述のとおり、不動産会社により物件の査定価格は異なります。そのため複数社を比較検討し、少しでも高く売れるノウハウを持った不動産会社に依頼するようにしましょう。
また、不動産会社を検討する際は、査定価格だけでなく「なぜその価格で売れるのか」といった価格の根拠まで確認し、納得できる説明や提案のある会社を選ぶと失敗しにくいです。
仲介・直接売却に関わらず、売りたい物件の実績が豊富な不動産会社を探してみるとよいでしょう。
まとめ
建物の耐震基準は、建築確認日で判断することができます。1981年(昭和56年)5月31日までの物件は旧耐震基準、1981年(昭和56年)6月1日以降の物件は新耐震基準となります。
必ずしも「旧耐震基準の物件は危ない」というわけではありませんが、震災のリスクが懸念される日本では、耐震基準は物件の売れ行きに大きく影響します。
売りにくく、安くなってしまいがちな旧耐震基準の中古物件を手放す際は、高く売るための工夫を取り入れ、的確なアドバイスを受けられる不動産会社へ相談しましょう。
どのような不動産会社に相談すればいいのかわからない場合は、一度に複数社へ査定依頼が可能な一括査定サイトの利用がおすすめです。
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