住宅ローンは退職金で完済すべき?[兵庫県伊丹市]
2024/07/30
こんにちは、アークエステートです!
本日のテーマは「退職金で完済する住宅ローン」について。現在、住宅ローンを返済中の方のなかには、定年退職時に受け取れる退職金でローンを完済しようと考えている方もいるのではないでしょうか。住宅ローンを完済すれば老後の生活は安泰と思われがちですが、実際にはそうともいいきれません。
この記事では、退職金で住宅ローンを返済した場合のリスクや、上手なローンの組み方などを解説します。
1:退職後の住宅ローン事情|60~70代の住宅ローン平均残高
2022年(令和4年)の金融広報中央委員会の調査によると、60歳代の住宅ローン残高は平均766万円、中央値は225万円、70歳代の住宅ローン残高は平均463万円、中央値は100万円でした。
住宅ローン残高別の割合は以下のとおりです。
60歳代 | 70歳代 | |
50万円未満 | 3.6% | 0.0% |
50万円以上100万円未満 | 1.2% | 0.9% |
100万円以上200万円未満 | 3.6% | 5.5% |
200万円以上300万円未満 | 1.2% | 2.8% |
300万円以上500万円未満 | 4.8% | 6.4% |
500万円以上700万円未満 | 6.6% | 6.4% |
700万円以上1,000万円未満 | 6.6% | 8.3% |
1,000万円以上1,500万円未満 | 8.4% | 7.3% |
1,500万円以上2,000万円未満 | 6.6% | 4.6% |
2,000万円以上 | 15.0% | 6.4% |
無回答(ゼロも含む) | 42.5% | 51.64% |
残高の平均 | 766万円 | 463万円 |
残高の中央値 | 225万円 | 100万円 |
60歳代では、2,000万円以上の住宅ローン残高を抱えている方の割合が高くなっていますが、これは退職金で住宅ローンを完済しようとしている方が多いからだと考えられます。
一方、70歳代でも住宅ローンが残っている方は、退職金で完済できなかった方が中心と見られます。
2:住宅ローンは退職金で完済すればよい?
現在、住宅ローンを返済中の方のなかには、「退職金で住宅ローンを完済すればよい」と考えている方もいるかもしれません。しかし、退職金の大半を住宅ローンの返済に充ててしまうと、老後の生活資金に困る可能性があります。
ここでは退職金の平均額と、老後の生活費について解説します。
①退職金の平均額はどれくらい?
2021年に中央労働委員会が実施した「賃金事情等総合調査」によると、大学卒(事務・技術労働者、総合職相当)の退職金平均額は、定年時で2,563万9,000円で、住宅ローンの完済も可能なほどの大きな金額となっています。
また、勤続年数が増えるほど退職金額も増える傾向にあります。
勤続年数・学歴別定年退職者の平均退職金額(男性)
大学卒 | 高校卒 | |
勤続35年 | 1,903万3,000円 | 1,745万7,000円 |
満勤勤続 | 2,230万4,000円 | 2,017万6,000円 |
勤続35年で退職した場合と、定年退職した場合の退職金額を比較すると、大学卒では約17.2%増、高校卒では約15.6%増となるため、受け取る退職金を少しでも増やしたい場合は、定年まで働き続けるほうがよいということがわかります。
また、「これだけあれば住宅ローンを完済できる」と考える方も多いかもしれませんが、定年まで働いて受け取った退職金を住宅ローン完済のために使った場合、その後の生活はどうなるのでしょうか。
②退職金を住宅ローンの完済に充てると、生活に窮するリスクも
総務省が発表している2022年の家計調査年報によると、老後の夫婦2人世帯の平均支出は、月額約26.9万円です。
また、生命保険文化センターの調査によると、老後の最低日常生活費は月額で平均23.2万円、ゆとりある老後にかかる生活費は月額で平均37.9万円という結果が出ています。
一方の収入を見ると、2020年度の老齢年金の平均受給額は、国民年金で月額5万6,358円、厚生年金保険(第1号)で月額14万6,145円、2021年度の老齢年金の平均受給額は、国民年金で月額5万6,479円、厚生年金保険(第1号)で月額14万5,665円でした。
つまり、会社員の夫と専業主婦の妻の場合、年金による収入は月額20万円程度になります。すると、平均的な生活費を25万円と考えても、60~90歳の30年間で1,800万円も不足する計算になります。
よって退職金で住宅ローンを完済すると、後々、生活が苦しくなる可能性が高いといえるでしょう。
今は「人生100年」といわれる時代です。長生きすることがリスクにならないようにするためにも、定年を迎える前に、住宅ローン残高や返済方法について再考することをおすすめします。
3:退職後、苦しくなりがちな住宅ローンの組み方
前述のとおり、退職金で住宅ローンを完済すると、その後の生活が苦しくなる可能性があります。本章では、老後の生活が苦しくなりがちな住宅ローンの組み方を4つ紹介します。
①完済年齢が75歳以上である
多くの金融機関では、住宅ローン完済年齢の上限が80歳前後に設定されているため、ローンを組み始める年齢が遅かったり、返済期間が長かったりする方のなかには、「75歳を過ぎてようやく住宅ローンを完済予定」という方もいるでしょう。
その場合、退職金で住宅ローン残高を返済しようと考えるかもしれませんが、すでに述べたとおり、退職金を住宅ローンの返済に充てると、老後の生活に影響が出る可能性が高いといえます。
それを防ぐには、現在の住宅ローンは何歳で完済できるのかもう一度確認し、無理のない範囲で積極的に「繰上返済」を行なうのも一つの方法です。
②定年後の返済額が年収の5割以上ある
現役世代の住宅ローン年間返済額は、年収の3割くらいまでに収めるのが無難とされているため、それを目安にローンを組んでいる方も多いのではないでしょうか。
しかし、定年退職後は収入が減るため、年収に対して年間返済額の占める割合が大きくなります。一般的には、年収の5割以上の年間返済額になると、かなり生活が苦しくなることが予想されます。したがって、将来、受け取れる予定の年金額と住宅ローンの年間返済額から、年収に占める年間返済額の割合を確認しておきましょう。
高金利の住宅ローンを組んでいる場合には、低金利の住宅ローンに借り換えるという方法もあります。
③定年後もボーナス併用払いになっている
現役世代のなかには、年2回のボーナス時に返済額を増額する「ボーナス併用払い」を利用して住宅ローンを組んでいる方も多いかもしれませんが、その場合は、老後の生活がますます厳しくなることが予想されます。
再雇用されたとしても、年収は低くなるのが一般的で、ボーナスがなくなってしまったり、大幅に減額されたりするケースも少なくありません。
そのため、定年後は住宅ローンの借り換えなどで、ボーナス払いをなくすのがおすすめです。ただし、ボーナス払いをなくすと毎月の返済額は増えてしまうため、退職金の一部を使って繰上返済することも検討しましょう。
④退職時の住宅ローン残高が2,000万円以上ある
大学卒で満勤勤続した場合の退職金の平均額は、2,230万4,000円です。
退職時の住宅ローン残高が2,000万円以上ある場合は、退職金をすべて使ってもローンが残る可能性があります。しかし、退職金をすべて使ってしまっては、老後の生活は厳しくなるでしょう。
高金利の住宅ローンを組んでいる方であれば、低金利の住宅ローンへの借り換えを検討し、金融機関の窓口で試算してもらうのがおすすめです。窓口まで行く時間が取れない方は、インターネットで簡易的な試算をすることもできます。
4:退職後の住宅ローンに悩まされないために、今できること
以下では、退職後の住宅ローンに悩まされないために、今できることを4つ紹介します。
①借りている住宅ローンを調べる
まずは現在、借りている住宅ローンについて、次の3項目を確認しましょう。
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現在、借りている住宅ローンの利率が2~3%以上の場合、ほかの住宅ローンへの借り換えで今より1%以上利率が低くなるのであれば、返済の負担を減らせる可能性があります。
借り換えの効果が期待できる目安としては、住宅ローン残高1,000万円以上、残りの返済期間が10年以上ある場合です。しかし、借り換えには諸費用がかかるうえ、返済負担の軽減効果が期待できないケースもあるため、事前にしっかりとシミュレーションすることが重要です。
②今後の収入を予想する
現在の住宅ローンについて調べたら、次は退職後の収入を予想しましょう。50歳以上59歳未満の方は、「ねんきん定期便」で、現在の収入や年金の加入条件が60歳まで続いた場合に、65歳から受給できる年金の見込額を確認できます。
再雇用などで働き続ける予定の方は、その場合の収入も考慮し、定年退職後も住宅ローンの返済が可能か計算してみましょう。年齢ごとの収入と、住宅ローンの年間返済額を表にまとめるのもおすすめです。
③資産の保有額と退職金の予想額を調べる
次に、自身が持っているすべての資産(預貯金、株式、債券など)の保有額を調べます。退職金の金額が予想できる場合は、それも合わせて算出しましょう。
資産の保有額と退職金の合計が、住宅ローン残高を上回っていれば問題ありません。しかし、住宅ローン残高を下回っている場合は、繰上返済を検討するなど、年金生活のなかでも無理なく返済を続けていける方法を探しましょう。
④家計を見直す
退職後に収入が減ることを考えて、家計の見直しを行ないましょう。「収入を増やす」「支出を減らす」という2つの視点から、家計改善の方法を模索します。
収入を増やす方法としては、再雇用や再就職で働くことが考えられます。支出を減らすには、光熱費や通信費などの固定費のほか、食費や被服費、日用品費、交際費などの変動費を正確に把握し、無駄な使い方をしている部分を洗い出すことが大切です。
ただし、支出を急に減らすのは難しいため、早めに取り組み始めて、節約に慣れるようにしましょう。
5:退職後も住宅ローンが残る場合の対処法
ここでは、退職後も住宅ローンが残る場合にどうすべきなのか、対処法を紹介します。
①借入先の金融機関に相談する
退職後の住宅ローン返済が厳しくなると予想される場合は、借入先の金融機関に相談してみましょう。場合によっては、返済期間延長などの返済条件の見直しにより、毎月の返済負担を軽減できます。
しかし、その場合は金利負担が増え、返済総額が増えることに注意が必要です。金融機関によって救済措置のルールは異なるため、まずは早い段階で相談しましょう。
②過剰な保障内容の生命保険を解約する
子どもが幼いうちは、自分にもしものことがあった場合に備えて、保障の手厚い生命保険に加入する方が多いのではないでしょうか。
しかし、子どもが成長して生活費や教育費が不要になったあとでは、生命保険の保障内容が過剰になっている可能性があります。貯蓄型の生命保険であれば、解約して住宅ローンの返済に充てることも可能です。
③再雇用や再就職で収入を確保する
前述のとおり、再雇用や再就職で定年後も働いて収入を確保するのも、有力な選択肢の一つです。近年では、定年退職後も仕事や雇用形態を変えて、働き続ける方が珍しくありません。
しかし、定年前の収入を維持することは難しいケースが多いため、ほかの選択肢も併せて検討するようにしましょう。
④親子リレーローンを利用する
親子リレーローンとは、親子などの親族同士が同居するために住宅ローンを組み、将来的には親から子へ不動産を引き渡すことを前提に、二世代にわたって1つのローンを返済することです。始めは親がローンを返済し、高齢になった親が定年退職した時点で、子がローンの返済を引き継ぐのが一般的です。
親子リレーローンを利用すれば、親が高齢の場合でも長期間のローンが組めるため、毎月の返済負担が軽減できます。
⑤資産を売却する
株式、債券、地金などの資産を保有している場合は、それらを売却して現金化するのもよいでしょう。
しかし、これらの資産の価値は景気や市場の状況などによって大きく変動するほか、有利に売却を行なうには、税金や法律などの知識も必要です。したがって、信頼できる専門家と相談しながら、慎重に売却を進めるようにしてください。
まとめ
家を購入する際は、35年などの長期にわたる住宅ローンを組むのが一般的です。しかし、ローンの組み方によっては老後の生活が厳しくなる場合があります。
完済年齢が75歳以上であったり、定年後の返済額が年収の5割以上であったりすると、退職後に生活が苦しくなりがちなので、それを踏まえて将来の家計プランを見直すことをおすすめします。
退職後に住宅ローンが残ってしまう見込みなら早めに金融機関に相談する、親子リレーローンを検討する、資産を売却する、といった対策をとる必要があります。
どうしても住宅ローン完済が難しい場合には、できるだけ早く家の売却活動を開始して、老後の生活を守るようにしましょう。
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